2022.11.10雑貨
1961年12月、急行電車のビュッフェ内で料理を温めるために、日本ではじめて電子レンジがテスト運用された。時を経て、温めることがレンジの役割だった時代が終わろうとしている。
10年前ぐらいから、ほとんどのレンジはオーブンレンジ、つまりオーブン機能が付いたものが主力だが、ここへ来て、様々な調理方法を備えたオーブンレンジが登場し、フライパンや鍋に取って代わる調理器具の主役になりつつある。
スチーム機能とは加熱水蒸気によるグリルや蒸す機能のことだ。各社とも製品の底に水を入れるタンクが付いている。この水を利用して調理するのだが、大手家電量販店のマネージャーに取材したところ、彼は「水で焼く」という表現を使って説明してくれた。最新機種の目玉となっている「自動調理メニュー」は、各社とも独自性を打ち出しているのだが、どれも、過熱水蒸気を利用した物が基本となっており、水で焼く様々なメニューが予めプログラムされている。
例えば、ゆで卵。スイッチを入れて20分間放置しておけば、実に見事なゆで卵ができあがる。火加減を見たり、湯の吹きこぼれを気にしたりする必要がない。他にも、ラタトゥイユやローストビーフ、肉じゃがといった、少し面倒なメニューも材料と調味料を加えてボタンを押すだけなのだ。少し料理に自信の無い方でも、分量さえ間違えなければ、ワンランク上のメニューができあがる。
安さが魅力の中国や韓国の電化製品に押されつつある家電市場だが、オーブンレンジ市場は、国内メーカーがしのぎを削り、売上も右肩上がりだと言う。どれも、過熱水蒸気を使うことをベースにしているが、そんな中でもそれぞれが個性的な機能を打ち出している。
A社は、マイクロ波を吸収して発熱する「ヒートグリル皿」で、実際に焼く状態に近い調理を実現している。B社は、庫内を「石窯ドーム」と呼び、オーブン調理では、文字通り300℃を超える石窯を再現しているため、本格的なピザなどを焼くことができる。C社は、庫内の食材の温度を検知するセンサーを無数に設置し、同じトレーに常温・冷蔵・冷凍を並べて温めた場合も、それぞれの食材の温度を感知し、均一に温めることができるという優れもの。他にも、過熱水蒸気によって食器の殺菌もできてしまう製品もある。
進化したオーブンレンジは、おいしくて健康的な料理を作ってくれるばかりでなく、時短にも貢献している。時間に余裕ができるからこそ、夕食の品数を増やしたり、本来、手間のかかる料理を作ってみたりと色々なチャレンジもできる。最新のものを手に入れれば、オーブンレンジが毎日の生活をちょっとだけ豊かにしてくれることは間違いない。