2021.03.12雑貨
近年、日本における「北欧デザイン」の人気は定着した感があります。北欧は、工業製品から服飾、家具に至るまで、その洗練されたデザインが多くの人々を魅了しています。中でもデンマークは、高級オーディオメーカーのバング&オルフセンに代表されるように、工業製品のデザインに定評があります。特に、照明器具に関して世界で唯一と言って良いほど多くの「ブランド」があります。
デザインが発達した理由となる下地は18世紀まで遡ります。17世紀に他のヨーロッパ諸国との戦いに敗れたデンマークは不遇の時代を迎えます。そんな中、当時の王室は、他の欧州諸国に負けない何かを作りたいとの想いから「デザイン」に目を向けます。その頃生まれた代表的なデザインが「ロイヤルコペンハーゲン」という陶器です。
良いデザインの照明や家具が生まれた理由は、もう一つあります。北欧は緯度が高く、真冬は午後3時台に日が沈んでしまいます。寒さも厳しく暗い日が多いので自然と人びとは家の中で過ごす時間が多くなります。そんな中でも楽しく生活するためには、家の中をいかに快適にするかにかかっています。必然的に人びとは自分の気に入る家具や照明を入念に選び、部屋に置こうとします。これが洗練されたデザインの北欧照明を生んだ理由なのです。
パソコン作業や読書などに最適な照度※は、750ルーメンと言われています。(※照度=単位面積1㎡に入射する光束(lm/面積)[lm(ルーメン):光源の光の量])。一方、食事やくつろぎの時間は50ルーメンぐらいが最適です。同じ照度でも光源の光色(色温度)によって明るさ感は異なります。北欧の照明器具が電球色を多用しているのに比べて、かつて、日本では蛍光ランプの白色光が好まれていました。それは、白熱電球よりも後から開発された蛍光ランプに進歩的で近代的なニュアンスを感じていたためで、経済成長期にあった昭和の時代はそれが主流でした。
時が流れ、経済が成熟期を迎えると、人々の暮らし方や感性も変ります。平成に入り、ストレスフリーやリラックスという言葉が台頭すると、明るすぎる照明はストレスを生むことが人々の間で共有されるようになります。人々の好みも蛍光色から電球色に移り、その流れの中で北欧の照明も注目されるようになったのです。
デンマークには世界的に有名なデザインの照明ブランドがいくつもあります。代表的なのは、ルイス・ポールセンの「PH5」です。ルイス・ポールセン以外にも、ヤコブセン、フリッツ・ハンセン、アルルトなど、枚挙に暇がありません。いずれの照明も電球色の間接照明を基本としています。PH5はシーリングライトなので、ある意味直接照明ですが、コードの長さを利用して比較的低い位置にまで下げ、部屋全体を照らすような使い方はしません。
「疲れたな~」と思ったとき、心と目を休めるためにも、間接照明を使って家の中に適度な暗がりを作ってあげましょう。北欧の照明たちが繊細な明るさとデザインで手助けしてくれるはずです。