2021.05.24雑貨
『クシュラの奇跡』(ドロシー・バトラー著、1984年)という本があります。ニュージーランド生まれのクシュラという女の子の奇跡を綴った実話記録本です。彼女は生まれながらに重度の障害がありました。染色体異常で脾臓・腎臓・口腔に障害があり、さらに筋肉麻痺のため3歳になるまで物も握れず、視力も50cm以上離れたものはよく見えなかったそうです。そんなクシュラに両親は、生後4ヶ月から一日14冊の絵本を読み聞かせることを実行しました。結果、クシュラは5歳になる頃には絵本が読めるようになり、知的レベルも平均以上の高さになったと本には記されています。
私も自分の子供に読み聞かせを実行した親の一人ですが、残念ながら3人兄弟の一番下だけ、読み聞かせをしませんでした。因果関係はハッキリしませんし、個人差もあると思うのですが、今でも、上の二人は本を読むのが好きで、一番下は全く本を読まないのです。(彼には、今でも、申し訳なかったと思っています。)
読み聞かせをした経験があれば感じることだと思うのですが、子供たちの「もっと読んで」という欲求は、楽しいからに他ならないわけで、3歳を過ぎると質問もいっぱい飛んできます。「どうして?」「これは何?」などなど。子供たちの好奇心が刺激され、想像する力が身についているのが手に取るようにわかります。そういう意味で、絵本は、言葉とイマジネーションの宝庫です。
最近は「ブックスタート」という活動が広がり、0歳児に対する読み聞かせを推奨している自治体が増えてきました。これは、0歳児健診などの機会に、絵本をひらく楽しい「体験」と「絵本」をセットでプレゼントするという活動です。抱っこのぬくもりの中で絵本を読んでもらう心地よさや嬉しさを「すべての赤ちゃん」に届けたいとの願いから、行政と市民が連携して行っている自治体の事業なのですが、とても素晴らしい活動だと思います。
5,000部でヒットと言われる絵本業界において『えんとつ町のプペル』は48万部超えの大ヒット、現在も記録を更新し続けています。映画化された作品も100万人を超える観客を動員。著者の西野亮廣さんは、自身5作目の絵本でクリエイターとしての地位を確立したと言っても過言ではありません。実は、『えんとつ町のプペル』は最初から映画で考えていたようで、そのチラシのような意味で絵本を出版したそうです。これは絵本業界にとって画期的なアプローチであり、「大人のための絵本」を受け入れる土壌が広がったと言えるかもしれません。大人の目が絵本に向けられたことに大きな意味があったように思います。
絵本の世界では、新刊発行と同時にヒットするということは珍しく、むしろ、ロングセラーとなった絵本が良い絵本と言われます。親から子へ、子から孫へと読み継がれた絵本はたくさんあります。中でも有名なのは、「いないいないばあ」「ぐりとぐら」「おおきなかぶ」「ノンタンシリーズ」などでしょうか。私がオススメするのは、「三びきのやぎのがらがらどん」。おはなしの内容は、「橋の向こう側の山で、たくさん草を食べようと考えた3匹のヤギ。小さなヤギ、中ぐらいのヤギ、大きなヤギ、みんな名前は「がらがらどん」。橋をわたっている途中に谷に住むトロル(おに)にでくわしてしまいます。小さなヤギの機転によって、小さなヤギと中くらいのヤギはトロルから逃げて橋をわたることができました。とうとう、一番大きくて強いヤギがトロルに勝負を挑みます。3匹のヤギは無事に橋をわたることができるのでしょうか?」といった感じです。これは実際こどもに、何度も何度も読み聞かせしましたが、一番、反応が良かったことを覚えています。子供たちが、少し大きくなってから自分で読み直したところ、小さい頃の印象と少し違っていたと言っていました
大半の絵本は絵も文字も最小限の表現でとどめています。ですので、そこには想像する余地があります。想像は人によっても違いますし、年齢によっても違ってくるのだと思います。こどもたちと一緒に、また、絵本の世界を味わってみたくなりました。