2020.04.21雑貨
ここ20年、雑誌の発行部数は軒並み減少傾向にある。雑誌の中でも部数が多いことが常識だった女性誌さへも、その凋落ぶりはすさまじい。かつて、30万部を誇った有力誌も、いまや、10万を超えれば御の字だ。
そんな業界の中にあって、5年で発行部数を大きく伸ばし、20万部を超える人気を獲得しているのが月刊「LDK」だ。
LDKは、その名の通り、リビング・ダイニング・キッチン周りのあらゆる商品をテストして評価する。その評価は、良いものは絶賛し、悪いものはハッキリ悪いと言う。こうした姿勢が話題となり、ちまたでは、「主婦のバイブル」「小売バイヤーのバイブル」とも呼ばれているのだ。
なぜLDKがこうした編集方針を維持できるかと言うと、一切、商品の広告を掲載しないという点にある。通常、雑誌は売り上げの大半を広告に頼っているが、LDKにはその広告がない。そのため、広告主に遠慮することなくズバズバと商品を切っていく。消費者としてはプロがテストした結果を真実として享受できるためLDKへの信頼度は格別高い。
LDKはテストする商品を全て買っている。毎月テスト用の商品購入だけで数百万の出費だそうだ。その商品をテストするために本格的な設備を整えたラボがあり、プロの手によってテストされる。プロとは食品であれば料理研究家、コスメであればメイクアップアーチストや美容研究家の方々だ。テストの方法も実にユニークで、お料理包丁の場合は、まな板に3,000回以上擦りつけた後で切れ味を評価する。テストのための機械も製作するという手の込みようだ。
考えてみると、ここまでするから自信をもって評価できるのだろう。評価に関してメーカーからクレームが来ることはほとんど無いに等しいと言う。逆にメーカーはLDKで高い評価を獲得するために、悪い評価の部分を次の製品改良に役立てているというから驚きだ。LDKが商品テストをして「BEST BUY」(最も買うに値する商品)に選ばれたメーカーは、店頭のPOPや商品ステッカーとして「BEST BUY」を使いたがる。なぜならば、このマークだけで店頭や通販での売れ行きが桁違いにアップするからだ。結果として、LDKは、この「BEST BUY」マークをメーカーに販売するという新しいビジネスモデルを構築した。つまり、消費者からだけでなくメーカーからも絶大な信頼を獲得しているのだ。フェイクが溢れるネットへの信頼感が低下する中、デジタル時代に逆行するかのような新手法の人気雑誌は、本音で勝負している。