シーベジタブル:海藻の意外な力と拡大する市場

2024.10.21食べもの

私たちの食卓に並ぶ「シーベジタブル」、つまり海藻は、今や単なるサラダの添え物に留まらず、世界中で急成長する市場の一端を担っています。和食では長らく親しまれてきた食材ですが、近年は欧米やその他の地域でも健康食材として注目されています。では、なぜ海藻がこれほど注目されているのでしょうか。それには、海藻が秘める栄養価の高さと、地球環境や持続可能な食料供給に対する寄与が関係しています。

海藻は万能選手

まず、海藻の栄養価は非常に優れています。代表的な海藻にはワカメ、ノリ、コンブ、ヒジキ、アオサなどがあり、それぞれが豊富なビタミン、ミネラル、食物繊維を含んでいます。特に、鉄分やヨウ素、カルシウムなどのミネラルと抗酸化物質やオメガ3脂肪酸といった成分も含まれていることがわかってきました。低カロリーでありながら、健康に欠かせない栄養素を多く含むため、ダイエットや健康志向の高まりを背景に、海藻は特に女性や若年層からの支持を集めています。

また、海藻は環境にやさしい食材としても注目されています。海藻の栽培は通常、農薬や肥料を必要としないため、環境への負荷が少ないのが特徴です。さらに、海藻は成長過程で大量の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するため、地球温暖化の抑制にも貢献するとされています。海藻の栽培が広がることで、海洋生態系の保護にも寄与し、より持続可能な食料生産が可能になると期待されています。例えば、ノルウェーやアイスランドなど、寒冷地域の海岸線を持つ国々では、海藻産業が積極的に拡大しており、地域経済の活性化にもつながっています。

さらに、海藻は「未来の食材」としての可能性も秘めています。特にバイオテクノロジー分野での研究が進んでおり、海藻からのバイオ燃料やバイオプラスチックの開発も進行中です。これにより、化石燃料に依存しないエネルギー源や、海洋プラスチック問題の解決策として、海藻が果たす役割が期待されています。バイオ燃料への活用だけでなく、海藻由来の化合物が医薬品や化粧品にも利用されるようになり、さまざまな産業分野でその価値が再評価されています。

期待されるシーベジタブル市場と課題

シーベジタブルの市場は成長を続けており、その規模は今後さらに拡大すると見込まれています。健康志向の高まりやサステナビリティへの関心が後押しし、特にアジア、ヨーロッパ、北米地域で海藻製品の需要が急増しています。海藻スナックや海藻サプリメント、さらには海藻を使った調味料やスープなど、さまざまな形で市場に浸透しています。また、飲食業界でも「プラントベース(植物由来)」の食材として、海藻を使った代替肉や代替シーフードの開発も進んでいます。これにより、ベジタリアンやヴィーガン向けの新しい選択肢としても注目されています。

ただし、海藻市場には課題もあります。需要の急増に伴い、過剰収穫による海洋資源の乱獲が懸念されています。また、安全な生産管理や品質管理が重要です。これらの問題に対応するためには、海藻の持続可能な生産体制の確立や、消費者の意識向上が求められています。

総じて、海藻は単なる健康食材の枠を超え、持続可能な未来を支える一端を担う存在として、ますますその価値を高めています。シーベジタブルとしての海藻は、今後も私たちの生活や産業において、その意外な力を発揮し続けるでしょう。

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かんのようこ

フリーライター。イラストレーター。絵本や「食」にまつわるエッセイなど執筆。

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