種の世界

2022.11.21食べもの

皆さんは私たちが日々口にしている野菜がどのような種から作られているかご存知ですか?
種は主に”固定種”と”F1種”に分けられ、同じ野菜でも種の成り立ちが違えば味や見た目も大きく変わってきます。栽培方法も異なり、価格にも違いがあります。
今回は、それぞれの種の特徴と、F1種についてご紹介いたします。

そもそも固定種とF1種って・・?

「F1種」とは、ハイブリット種とも呼ばれていて優劣の法則を利用して良いところだけが出るよう品種同士を掛け合わせ初めて生まれた種のことです。病気に強く癖が出にくいことが特徴で、大量生産に適しているためスーパーで販売されているにんじん、たまねぎ、ピーマンといった身近な野菜は、ほとんどがF1種です。一回に一度しか収穫できないため、その都度、種を購入する必要がありますが、生産が安定していて作業も楽なため農家にとっては収益の主役となっています。
一方で、「固定種」とは、固定された地域に適応している種のことで伝統品種と呼ばれることもあります。形状や収穫時期にばらつきがあるため、収穫量や品質は安定しないというデメリットがありますが、逆に、個々の品種に特徴的な性質が出やすく、それを付加価値として個性的な野菜を作ることも可能になります。また一つの種から繰り返し栽培できるため、循環型農業や自家栽培にも適しています。
京野菜、鎌倉野菜などと地方の名前を冠した野菜を目にしますが、これらは固定種を中心に珍しい品種が豊富で地方独自の伝統食などにも使われています。〇〇なすとか、〇〇大根といった名前の野菜たちは、この固定種が多いと考えて良いと思います。

F1種への誤解

F1種は雄性不稔(ゆうせいふねん)という遺伝現象を利用して作られているのですが、雄性不稔とは雄しべがない、もしくは、雄しべはあっても花粉がなく、雄の機能を果たさないことです。この現象は自然界の植物にも普通に見られる性質で、決して人工的に作り出したものではないのですが、F1種に対して「雄性不稔=種子をつけない=不自然だからキケン」という誤解を生む要因になっていると思います。

F1種の野菜のおかげで、私たちは安定した価格で野菜を手に入れることができます。一方で、F1種を海外からの輸入に頼っているのが現状で、円安による価格の高騰や政情不安による輸入量の低下など不安定要素を多くはらんでいます。F1種と日本の気候にあった固定種のどちらもバランスよく選ぶことが、私たちの食を安定した豊かなものにしてくれると思います。

− writer

placeholder image

KEI

写真付きコラムの執筆。コミュニティクリエイター。フォーチュンテラー(タロット)。日本大学藝術学部写真学科卒業。

recommend

おすすめのコラム