2022.06.14食べもの
2020~2021の2年間、コロナ禍における食生活に、いくつかの大きな変化が見られた。一つは、Uber eatsに代表されるデリバリーが広く認知されたこと。そして、もう一つは冷凍食品の需要が急激に伸びたことだ。
冷凍食品の需要は、それ以前も伸びていたが、特にこの時期、冷凍野菜と個食向けの食事・おやつが伸びたという。冷凍野菜は業務用での伸びが目立った一方、個食向けはあきらかに「巣ごもり需要」が追い風となった。急激な需要の伸びに対して冷凍食品が見事に対応できた理由、それは、日頃からメニューの多様化に取り組んできた冷食業界の努力があったからだ。
毎日、家で仕事をするご主人や子供達のために奥様が用意する昼食。日々手作りが望まれるのかもしれないが、それが1年以上続くとなると、奥様の負担は想像を超える。冷凍食品は、そこにうまくフィットした。事実、「初めて冷凍食品の棚をまじまじと見て、これほど色々なお昼ご飯に適した商品があるとは思わなかった」という主婦の感想をメディアで見たことがあるが、品揃えの豊富さと調理の簡単さ、さらには適切な値段と、昼食を準備する奥様にとっては三拍子揃ったパーフェクトなジャンルが冷凍食品だったのだ。
こうした追い風を受けて、各メーカーも次々と進化した新商品を出している。進化形における目下のキーワードは、「ワンプレート」と「健康志向」だ。
「ワンプレート」は、それまで、「おかず」としての需要が中心だった冷凍食品が、個食ニーズを受けて1つの冷凍食品で1回の食事を済ますことができるものとして登場した。
例えば、電子レンジで温めても"冷たく"仕上がるトッピングもすべて入った「冷やし中華」。お皿も要らないパスタや焼きそば。丼物やラーメンなどは、お店に負けない味を追求したものまで登場している。他にも、有名シェフの手によるものなど、色々なメーカーが「ワンプレート」を提案している。
「ワンプレート」とは少し異なるが、個食ニーズという点では共通する「おやつ・スイーツ」も進化が止まらない。チルドのカップゼリーで有名なメーカーがアイスゼリーというジャンルのスイーツを出して冷食業界に名乗りを上げたと思うと、アイスやお菓子で有名なメーカーは、有名な自社のクッキーを手作りできるキットを冷凍食品として打ち出した。他にも、ぜんざいや今川焼きなど、軽くつまめるおやつ・スイーツが活況を呈している。
もう一つのキーワードが「健康志向」だ。一足先にアイスクリーム業界では、カロリーゼロアイスや高タンパク質アイスが健康志向の代表格として登場していたが、ここへ来て、冷凍食品も大豆ミートを使ったメンチカツやハンバーグなど健康志向を軸とした商品が相次いで発売されている。他にも、中性脂肪を下げる機能性表示食品や、それまで食材としてあまり使用されなかったサバを使ったおかず、さらに衝撃的だったのは野菜を中心に具を増やした「具を食べるパスタ」など、本当に多種多様である。
いずれにしても、高まった需要と多様化するニーズを受けて、冷凍食品の進化はこれからも続くだろう。かつては、食卓の主役では無かった冷凍食品が、選ぶのも楽しいほどに多様化・多種化することは、私たち消費者にとって、とても嬉しいことである。