鉄道旅の魅力

2024.03.21おでかけ

明治以来、鉄道は旅人たちに愛されてきましたが、今は移動手段も増え、列車に乗ってゆっくりと”旅の時間”を楽しむことも減ってきているように感じます。それでも、鉄道ファンの友人に言わせると、”日本各地には魅力的な路線や鉄道旅のプランがいっぱいある”そうです。今回は友人に教えを請いながら、鉄道旅の魅力について少しだけ紐解いてみたいと思います。

次々に誕生する趣向を凝らした旅のプラン

鉄道旅に馴染みのないひとでも、ついつい乗りたくなってしまうような旅のプランを見つけました。「SAKU美SAKU楽(さくびさくら)」は、この春にピッタリな岡山県北エリアをめぐる観光列車のプランです。桜をイメージしたピンク色の華やかなデザインの列車で体感できる3つの「SAKU」が売り物だそうです。3つの「SAKU」とは、楽しさや美しさを「作」る、笑顔や花が「咲」く、美しさや楽しさを探しもとめる「索」の3つで、名湯・美作三湯(湯郷温泉・湯原温泉・奥津温泉)や桜の名所もあり、豊かな自然を存分に楽しめるようになっています。ここでしか食べられない岡山の伝統とおいしさを詰め込んだお弁当やお土産も見どころです。

全国に鉄道網を張り巡らすJRでは、知っていそうで知らない様々なプランが用意されています。例えば、「青春18きっぷ」※、名前は聞いたことがあるけれど、どんなプランなのか良く知らない人が多いのではないかと思います。まず、ネーミングからして年齢制限がありそうな感じですが、実は、ありません。端的に言うと、JR全線の普通列車の普通車自由席乗車券が1枚5回単位で発売されているのが「青春18きっぷ」※です。1回につき有効期限は当日限りなので、お一人で5日間連続の旅をするも良し、5人で日帰り旅行をするも良し、あなたのプラン次第で楽しみ方も変えられます。他にもJRでは、新幹線・特急列車含む自由席が一日一万円で乗り放題のフリー乗車券を期間限定で販売するなど、様々なキャンペーンを行っています。

ローカル色豊かな私鉄でも、鉄道旅の魅力をアピールするために、様々な企画や工夫がされています。北関東を走る6両編成の新型特急は、徹底的に車両にこだわった特急電車です。プライベートジェットをイメージしたスイートルーム風の車両や、気品高く落ち着きのあるホテルのラウンジをイメージしたカフェなど、電車とは思えないワンランク上の室内空間とサービスに、乗車した方からは、かつてない満足感を味わうことができると評判になっています。また、一両編成のかわいい車両が走る千葉の私鉄では、沿線のお花畑の中を駆け抜ける電車を観るために、毎年、春には沢山の人が訪れていましたが、もっと楽しんでいただこうと、房総半島の「山の幸」「海の幸」を堪能できるお弁当を目玉にした「ランチクルーズ」プランを作ったところ予約が殺到しているそうです。

※詳しくは「JRおでかけネット」でお確かめください。

鉄道ファンから楽しみ方を学ぶ

「鉄道旅」を扱ったネット動画は100万回再生を超えるものがたくさんあり、テレビ番組も毎日のように放送されるなど、「鉄道旅」は人気のコンテンツです。鉄道には、通称「鉄(テツ)」と呼ばれる根強いファンがいます。「鉄(テツ)」にも色々種類があるようで、楽しみ方もそれぞれ違います。旅とは関係のない「時刻表鉄」や「鉄道模型鉄」なども含めると、ざっと20種類以上の「〇〇鉄」があるそうです。

旅する鉄道ファンの中で、一番よく耳にするのが「乗り鉄」です。「乗り鉄」とは、列車に乗車することを中心においたファンのことで、大きく分けて3つのタイプがあるそうです。車両による特徴の違いを乗ることで確かめたい人、鉄道での旅を楽しみたい人、より多くの路線へ乗ることを目指す人など。中には飛行機を使って遠隔地へ行き、そこで鉄道に乗る人もいると言いますから、そのファン度の強さには驚かされます。

車両の持つ個性的な外観に魅力を見つけているファンもいます。彼らは、「撮り鉄」と呼ばれ、列車の写真撮影を愛好する人たちです。走行する列車の車両そのものを近距離から撮りたい人や、山の緑や紅葉、雪景色、海辺など四季折々の自然の中にある列車の姿を捉えたい人など、”被写体は列車”という共通項はあるものの、嗜好によって、いくつものタイプがあるようです。

「食べ鉄」「呑み鉄」は、「〇〇鉄」の中でも近年、新しく加わったジャンルです。「食べ鉄」は、ズバリ、おいしい料理を食べるために鉄道に乗る人たちのことです。例えば、観光列車の車内でご当地のおいしい料理を楽しんだり、個性豊かな駅弁を味わったり、降車して全国各地のグルメを堪能する等々。この「食べ鉄」の軸足を少しだけ「お酒」に寄せたのが「呑み鉄」です。なんでも「呑み鉄」は、BS放送の鉄道旅番組のタイトルが話題になり生まれた新ジャンルだそうです。

いずれにしても「〇〇鉄」って、どれも、とても楽しそうに見えますね。鉄道ファンでなくても、鉄道旅を色々な視点で愛するひとたちの楽しみ方を知ることで、自分にあった旅を見つけるヒントになりそうです。少しづつ暖かくなり気持ちも外へと向かっていくようなこの季節、鉄道を使った旅に出かけてみてはいかがでしょうか?

− writer

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甲斐 ツマオ

エッセイスト。漫画原作者。映像作家。

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