進化するミュージアム(前編)

2023.08.21おでかけ

ミュージアム(museum)は、日本語訳すると美術館・博物館となります。学術的には、博物館は自然、歴史、民俗、文化に関する資料を収集・展示する施設。 一方、美術館は絵画をはじめ彫刻、工芸品などの美術作品を展示する施設を言います。最近では、そのカバーする領域が広がり、ありとあらゆるミュージアムが存在します。ミュージアム関連のポータルサイトに登録されている施設の数は、なんと、8,000を超えています。

ガイド方法の進化

1926年に開設された東京府美術館(現東京都美術館)が、日本で最初の美術館と言われていますので、近代的な美術館がオープンしてから、まもなく100年を迎える訳です。当初の美術館の役割は、学術的かつ教育的なものでした。今でもそれは大切な目的なのですが、この10年、よりレクリエーションやエンタテイメントの要素が求められるようになってきました。そんな中、めざましい変化を見せているのがガイドの方法です。

従来のミュージアムでは、ガイドスタッフの方の解説を聞いたり、ガイドブックを片手に展示物を見て回ることが定番でした。一般的に展示物の側には説明パネルが置いてありますが、30年ほど前から音声ガイドが導入されるようになりました。当初は備え付けの機器を利用してのガイドでしたが、ここ10年、ポータブルな機器を貸し出すミュージアムが増えました。現在はスマホで音声ガイドを聞ける施設が主流になりつつあります。特にコロナ禍の3年で、衛生面からも自分のイヤホンで聞くことができるスマホアプリが急激に浸透したようです。

音声ガイドアプリの中には、有名な俳優さんや声優さんが解説してくれるものもあります。展示品の見どころや、より深い鑑賞のために知っておきたい事柄・時代背景・物語などを、情緒豊かに語ってくれるので確実にファンを増やしているようです。こうしたアプリを使った方からの評判を聞くと、「俳優さんの臨場感が良かった」「館外でも聞けるので来館前の予習ができる」「後から余韻を楽しむのにも便利」「有料でも、こちらの方が良い」など、時間と空間を超えてミュージアムを楽しんでいる様子がうかがえる答えでした。

オンライン美術館

『誰でも』『いつでも』『どこででも』オンライン上でアートを楽しむことのできるのがオンライン美術館です。実際の美術館や博物館が主催するオンライン美術館も多数あります。初心者やあまり興味の無い方に対して将来的に実際の美術館に足を運んでいただくために、まずは、手軽に「アートに触れる機会」を提供することが、オンライン美術館を運営する目的の一つです。もちろん、美術愛好家の皆さんに対しても、ポスターやチラシの告知よりも、オンライン美術館を閲覧いただくことの方が、より強力な告知ツールになっているようです。もちろん、本物では無くデジタルの世界ですが、最近では、そのデジタルを活かして更に進化した「バーチャルミュージアム」というものも出てきました。

「バーチャルミュージアム」とは、VR(バーチャルリアリティー)や3Dウォークスルーなどの最新技術を使ったアート鑑賞の方法で、自宅に居ながらにして新たな体験ができると話題を呼んでいます。3Dウォークスルーは、立体的に見える美術館の建物の中を自分で歩いて進んでいくようなイメージです。見たい絵のアイコンをクリックすると説明文や説明映像が流れます。先に紹介した音声ガイドアプリと組み合わせて楽しむ方法を提案しているミュージアムもあります。また、「バーチャルミュージアム」の中には、VRゴーグルを推奨しているところも増えてきました。国立科学博物館では、「おうちで体験!かはくVR」と題して、VRゴーグル専用サイトを設けたところ、子ども達の間で人気になり、実際の来場者も増えたようです。VRゴーグルを付けて「かはくVR」の映像を見ると、実際の展示物が自分の眼前にある感覚(錯覚?)で、まさに、仮想現実を体験できます。

「オンライン美術館」や「バーチャルミュージアム」は、利用者にとって、24時間365日、思い立ったらいつでも作品の鑑賞ができ、おまけに海外や遠方にある美術館でも、ほぼ無料で楽しめるので、メリットこそあれ、デメリットは何もありません。今後、ますます、増えて行く傾向にあると思いますが、VR関連の技術の進歩はめざましいものがありますので、3年後には、私たちを更に驚かせてくれるようなバーチャルミュージアムが出現するかもしれません。

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KEI

写真付きコラムの執筆。コミュニティクリエイター。フォーチュンテラー(タロット)。日本大学藝術学部写真学科卒業。

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