2021.03.26おでかけ
2021年の桜の開花は、例年に比べて53年ぶりの早さだと言う。東京、福岡の3月22日を筆頭に、西日本各地では3月末までに満開を迎える。例年ならゴールデンウイークに見ごろとなる東北一有名な桜の名所、青森・弘前城も4月19日に満開が予想されている。
3月21日まで緊急事態宣言が維持された首都圏では、2020年に続いて、あちらこちらで「お花見どうするの?」の声が聞かれた。お花見と言えば、かつては大人数で桜の木の下に集い、シートを敷いて飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。企業の新入社員は場所取りのために朝から公園に陣取る姿が珍しくなかった。時代の流れとともに、そんな花見を嫌がる人も現れ、桜を愛でる方法を工夫する人々も増えてきた折、「ソーシャルディスタンス」が決定的な花見スタイルの変革をもたらそうとしている。
ここ数年、人気となっているのが「お花見のできるカフェ」。今年は人数制限もあるので、早くから予約が殺到していたのだが、例年より10日早い満開に予約変更に追われる店も多いと言う。お花見カフェで有名なのは東京・目黒川沿いの店だ。テレビドラマに登場する機会も多かったため、「これはイケる!」と桜が見えるカフェが続々オープンし、全国的にお花見カフェを楽しめるようになった。ネット上では穴場も含めて「お花見のできるカフェ」の情報が溢れている。
昨年の教訓からか、今年は「自宅で楽しむお花見」スタイルを打ち出している雑誌やネットメディアも多い。花工房あげたけさんでは、昨年に続いて「自宅で!桜のお花見キット」を販売している。これは蕾がついた桜の枝と鉢がセットになっており、自宅で組み立てて楽しむものだ。
変わり種としては株式会社啓文社さんが開発した、お花見が楽しめる紙の花「Magic桜」が話題になっている。紙で出来た木にマジックウォーターをかけると、1~2時間でふわふわピンクの桜の花が咲き始め、10~12時間で満開になり、出来上がったツリーは4週間ほど楽しめる。
巣ごもり花見をテーマに、大丸では「お花見おせち」という新コンセプトを打ち出している。美濃吉、銀座アスター、ポール・ボキューズ デリなど18店のおせちが揃っており、さらに花見スイーツ、お花見気分を上げるテーブルウエアまでトータルに巣ごもり花見を盛り上げるアイテムを提案している。
桜の花びらを使ったスイーツや料理も、例年以上に増えている。『星野リゾート OMO5東京大塚』では、ホテルに泊まらなくても食べられる「お花見スイーツセット」を準備し、店内も桜の装飾で演出した上で、ソーシャルディスタンスを保ちながら桜の季節を楽しむ方法を提案している。他でも、こうしたプランを提案しているホテル・旅館・飲食店は数えきれない。
浅草では名物の人力車で桜の名所を巡るサービスを数年前から実施しているが、今年は、地元の有名すし店のお弁当も付けて、ゆっくり、人込みを避けつつ「動くお花見」を楽しむプランを用意している。
冒頭にご紹介した東京・目黒川では約3.8kmに渡り約800本のソメイヨシノを中心とする桜並木が続く。下流付近で話題になっているサービスが「お花見クルーザー」だ。船の上から両側のきれいな桜を見上げながら食事も楽しめ、リクライニングソファが導入された船もある。
他にも様々な「新しいお花見スタイル」が全国、津々浦々で提案されているが、いずれも、景気が低迷する観光・飲食業界の方々の努力と工夫の賜物だ。「新しいスタイルで桜を楽しむ」ことにより、彼らを応援できるのであれば、喜んで享受したいものだ。