サスティナブルな暮らし

2020.12.28暮らし

北欧に見る「SDGs」

今や世界の国々で共通のテーマとなった「SDGs」。それは、2030年までに達成するための持続可能な17のグローバルな開発目標と169のターゲットからなる。日本においても官民一体となっての取り組みが目立つ。「SDGs」の最も重要なキーワードは”Sustainable”。「持続可能な」という意味を持つことのワードは、北欧などの環境先進国においては、企業は勿論のこと家庭においても「サスティナブルな暮らし」を意識したライフスタイルを早くから取り入れていた。国別「SDGs」の達成度を見ても、スウェーデン、デンマーク、フィンランドがトップ3だ。

彼らのライフスタイルの根底にあるのは、「モノを増やす」という考えではなく、「必要最低限のモノで、シンプルに生きる」という考え方だ。その考えを基軸にすると、スウェーデンの自然享受権という概念に見られるように、自然と共存し、自然に生かされて暮らすというスタイルをも内包する。具体的には、リユース、リサイクル、自家製ジュースやジャム、自転車の多用などが代表的な例と言えよう。また、北欧では新築の家が驚くほど少ない。代わりに、築100年、200年の家をリフォームすることも珍しくない。

日本においても、ここ数年、雑誌やネットで「サスティナブルな暮らし」が目につくようになったが、(ちなみに、日本の国別「SDGs」達成度は15位だ。※2019年調べ)2020年、コロナのパンデミックによって、この考え方が加速したように見える。

身近なところからサスティナブルに

2020年、日本において起きた「サスティナブル現象」をピックアップすると枚挙にいとまがない。
レジ袋の有料化に伴い、エコバッグが急速に浸透した。このエコバッグだが購入するのではなく、古布をリユースしてオリジナルなものを作る人が増えているという。ある工房では、リユースで作ったエコバッグをネット販売し、その収益の一部をアフリカの子供たちのために寄付している。マスク不足の折、多くの人が古布からお手製マスクを作った。ペットボトルに替わって、マイボトルを持ち歩く人が増えた。フードロスをなくすための企業や家庭での取り組みが盛んになった。フリーマーケットアプリの人気も、根底に流れるのはリユースだ。

ライフスタイルの変化も目についた。従来の電車通勤から自転車通勤に変えた人。在宅勤務に乗じて程よい郊外に移住し、週末は家庭菜園で野菜の栽培を楽しむ人も出てきた。さらに積極派は、転職や独立を伴って田舎に移住した。空き家問題の解決にもなると、移住者に住居提供などの特典を与え始めた自治体も少なくない。

こうした現象を見ると、「サスティナブルな暮らし」には、強欲や争いは感じられない。むしろ人々は、背伸びせず、自分の足元を振り返り、足りないものや余ったものは、他人と分かち合う。大袈裟に言わせていただくと「サスティナブルな暮らし」の行きつく先は「世界平和」なのである。小難しくて、一般人には縁がなさそうに思えた「SDGs」。視点を少し変えるだけで、自分の小さな行動がみんなの平和に繋がるのであれば、とても嬉しいことだ。取り入れない理由は、どこにも見当たらない。

− writer

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甲斐 ツマオ

エッセイスト。漫画原作者。映像作家。

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