2024.04.30暮らし
今「買い物難民」と呼ばれる人たちが増えています。買い物難民とは食料品や日用品など生活必需品の買い物が困難な状況に置かれた人を指し、主に過疎地域の住民や高齢者層に多く深刻な問題になっています。
過疎地域においては、人口減による小売り店の減少が主な原因ですが、驚くべきは都市部においても高齢者の買い物難民が激増しているという事実です。「都市部ならスーパーやコンビニなど、買い物には困らないはず。」と考えがちですが、高齢者の体力では、歩いて行ける距離にあったスーパーがなくなり、かつ自家用車もなく、公共交通も無い場合、 単身の高齢者や高齢者だけの家庭はたちまち買い物難民になってしまいます。
坂の多い川崎市の丘陵地帯には、昭和の頃に建設された大型の団地が点在しています。数千世帯が住んでいますが、高齢者率が高く、買い物難民問題が顕在化している地域として早くから注目されていました。かつてはどの団地も近くにスーパーや小売り店がありましたが、時の経過と共に、住人が減り、スーパーがなくなり、買い物をするには、一番近くのスーパーまで30分以上かけて歩いて行き、重い荷物を持って帰るしかない状況になっていました。この問題を重く見た自治体がコミュニティバスの運行などを実施しましたが、うまくいかず、最終的には近隣のスーパーが週に2日、朝から夕方まで無料のお買い物バスを休み無く巡回運行することにより問題を解決し、大きな話題になりました。
農林水産省は「食品アクセス問題ポータルサイト」を立ち上げており、買い物難民の現状や問題に対して4つの視点を軸に対策を掲げています。
① 店を作る
店の閉業によるアクセスの困難を解決するために、過疎化した商店街の空き店舗を買取り、有志でのコミュニティストアの設立など。自治体と協力のもと行う。
② 店への交通手段を提供する
過疎化に伴う公共交通機関の廃止や高齢者の免許返納により交通手段が無くなっている状態の改善策として、社会福祉協議会やNPOによる店舗への送迎バスやタクシーの手配。
③ 商品を届ける
交通手段の減少や自宅から出られない事情のある層に向けて注文された商品を自宅まで宅配する。インターネットを使ったネット通販のみならず、電話やFAXでの申し込みにも対応。
④ 店舗を届ける
店舗のない地域にバスや軽トラックを改良した移動販売車での販売やあおぞら市場として公民館など自治体の施設を使った出張販売など。
これらを軸に、地域ごとに入念な調査を実施し、細かく対策を立てることが今後の課題として揚げられています。
同時に、高齢者にとっては、商品供給だけではなく、買い物に出かけるということ自体が“生活の彩”になるため、可能な限り来店できるような形での商品提供やコミュニケーションを積極的に取っていくことも課題として取り上げており、高齢者の“心の健康”にも配慮がなされています。
多くの人が便利な世の中であると感じていても、その一方で、こうした課題に直面している人たちが一定数いることを理解し、私たち自身も問題意識をもって生活することが必要だと感じています。