2024.04.20暮らし
私たちの生活に馴染み深い「お弁当」が「BENTO」として世界で注目を集めています。
インバウンド向けの旅行サイトでは、従来、日本食の料理体験が定番のコースとなっていましたが、新しくBENTO作りが加わり、欧米はもとよりアジア各国からの旅行客にも新たな日本文化体験コースとして人気になっています。人気の背景には、日本食が世界各地で食べられるようになり日本食への興味関心が高まったということがありますが、それ以上に、海外では携行食という習慣があまりなく珍しいからなのです。欧米の携行食は、サンドウィッチとフルーツのみのシンプルなものが多く、日本のようにご飯や主菜、副菜などを一つの箱にきれいに詰める文化はありません。古くから日本食は、煮物や焼き魚など比較的、水分が少ないおかずが中心ですが、欧米はソースを主体としていますし、中華圏でも水気の多い料理が中心ですから、なかなか持ち運びが困難です。また、東南アジアは屋台文化があるので、携行する必要がありません。ですから、世界では日本のような「お弁当」という文化が育たなかったと言えます。体験コースに参加した方々の声を聞くと、BENTO作りの際に一度に様々な料理を作ることに対して満足度が高いようです。さらに、日本ならではの「タコさんウインナー」や「海苔の文字」などは、参加者の方々から歓声があがるほどだそうです。
BENTO人気の影響は、インバウンドの方々の買い物にも影響を及ぼしています。デパートや雑貨店、東京下町の道具街などでは、「お弁当箱」を求める観光客が増えました。そもそも、海外にはタッパのようなシンプルなプラスチック容器しかありませんが、日本で売られるお弁当箱は、細かい仕切りがあり、わっぱのような伝統工芸品からキャラクター入りの弁当箱、さらには二段重まで様々な種類がありまあすから人気になるのも納得です。
海外でBENTOが注目を集めはじめたのは2010年頃からで、フランスから広がったと言われています。フランスでは日本のアニメや漫画が人気で、登場人物たちが学校でみんなで楽しく弁当を食べる様子を見て、「これはいったい何を食べてるの?」「あのボックスのようなものは何?」と話題になりました。その後、徐々にアニメファンの中から、見よう見まねでBENTOを作り、SNSで発信する人が現れるようになりましたが、人気に拍車をかけたのが「キャラ弁」でした。最初は動物をモチーフにしたシンプルなキャラ弁が多かったのですが、日本のYoutuberのキャラ弁動画の中でアニメに登場するキャラクターをアレンジしたBENTOがフランスでも大きな話題になりました。今や日本のアニメは世界を席巻するほどの人気ですが、そのキャラクターを弁当で表現することが、外国人にとっては想像を超える衝撃的な事だったらしく、日本独特の「かわいい」や「オタク」的な文化の一つとして受け入れられました。
日本の「お弁当」は江戸時代にお花見の席や紅葉狩り、観劇の合間に食事を楽しむために作られた「提重」が原型となり、そこから発展して今日に至ると言われていますが、今や日本以外の国でも「BENTO」と名を変えて売られるようになっています。アメリカのシアトルでは忙しいビジネスマンを中心に今まではサンドイッチが主力だったところを、BENTOがとって代わるほどの人気だそうです。様々な料理を一度に、しかも手軽に楽しめるところが受け、BENTOの需要が急増、専門店まで登場しています。今後も、ますますBENTOの魅力が世界の人々に伝わることで、私たち日本人があっと驚くような新しいBENTOが登場するかもしれません。
私たちの生活の中で当たり前のように馴染んでいるものであっても、外国人の視点で見ることによって、思いもよらない魅力に気付かされることがあります。BENTOも、そんな気付きを与えてくれる文化の一つだと感じました。