変化する社会人の英会話学習事情

2024.01.20暮らし

今の30代以上の人は、中学・高校時代の英語教育において「聞く・話す」よりも「読む・書く」により重点が置かれていました。そのためリスニングやスピーキングに苦手意識のある人が多いのが実情です。この30年間、ことあるごとに実施される英語学習に関する意識調査の結果を見ると、社会人の約7~8割が「英語を話せるようになりたい」と回答しています。しかし昨今、インバウンド観光客の増加、企業のグローバル化など、日常の様々なシーンで英会話を必要とされる場面が多くなってきたため、もはや「英語を話せるようになりたい」ではなく、「英語を話さなければならない」という人の割合が増えてきているのも事実です。こうしたニーズの変化に伴い、社会人の英会話学習方法も変化の兆しを見せています。

英会話学習の変遷

2020年より会話を重視した英語の授業が小学3年生から義務化されましたが、日本で公的な英語教育が始まったのは明治中期からで、1885年には、中学校における英語教育の時間に週16時間が割り当てられていました。そこから約100年後、社会人の間に最初の英会話学習ブームが訪れます。ブーム以前の主流は日本人講師が教える大人数での英会話スクールでしたが、「駅前留学」というキャッチフレーズで一世を風靡した英会話スクールが話題になり、外国人講師が教える少人数でのレッスンが人気になりました。この頃から、英会話スクールは急速に私たちの身近な存在になり、全国各地の駅周辺には次々と英会話スクールが開かれるなど、当時の勢いは凄まじいものがありました。

2000年代に入った頃からCDやDVDなどの自宅でも学習ができる教材に注目が集まり英会話スクールの勢いは停滞します。さらに、2010年代になると、ネット環境の充実とPCの普及によりオンラインでの英会話学習の需要が高まり、海外在住の講師と気軽に、しかも安価でオンラインで会話するサービスが人気になりました。歩調を合わせるように街の英会話スクールも、オンラインでのレッスンを併用するようになってきました。

1980年代から90年代は、ワーキングホリデーの利用者が年間100万人に達するほどの人気で、真剣に英会話を身につけたいと思う人は海外留学を目指しました。同じ頃、「駅前留学」が流行ったことにより趣味程度に”英語が話せたらいいなあ”と思う人の割合も増えました。現在でも英会話を学習する人の過半数は、こうした”英語話者への憧れ”が主な動機のようですが、令和になり、その様子が少し変わってきました。

より真剣味を増した令和の英会話事情

現在は、スマートフォンの普及により、いつでもどこでも、英会話学習が可能なインフラが整っています。そのため、費用的にも英会話を習うハードルが一気に下がり、オンラインやアプリで気軽に習えるのは当たり前の時代に突入しています。それだけに、英会話スクールのビジネスも様々なニーズに応えられるようなきめの細かいサービスを提供しはじめています。例えば、実際に社会人経験があり、専門分野に長けている講師から職種別の業界用語などを細かく丁寧に教わることができるレッスンがあります。IT業界でのキャリアアップを目指す人にとっては、英会話講師としての基本を身につけた上で、かつIT業界の専門家が先生だったとしたら、ビジネスの現場で使える生の英会話を教えてもらえる訳ですから、これほどニーズにマッチしたサービスはありません。このサービスでは、会議やプレゼンテーションのやり方まで、英会話を学ぶと同時にビジネスに必要なことも同時に学べるプログラムになっているとのこと。さらに、履修方法として個人はもちろんのこと、企業単位で導入している会社も増えているようです。海外赴任のために、3ヶ月の集中レッスンを社員向けに提供したり、レッスンの時間を就業時間としてカウントしてくれる会社など、ビジネスにおける英会話の重要度が高まっていることが伺えます。

他にも面白い英会話学習としては、ネイティブスピーカーの発音と思考を学ぶスクールがあります。発音に関して、日本人はおろそかにする傾向がありますが、正しい発音ができれば、正しくヒアリングできることに繋がりますし、相手にも正しく伝わる訳です。また思考を学ぶことに関しても、西洋の文化や哲学への理解、歴史的背景などの知識を得た上で会話することで、より円滑なコミュニケーションが取れるようになり、ビジネスの成功や発展に繋がるという理由から重要なレッスン項目になっています。こうしたサービスが誕生するということは、相手の考え方を知らずして、ただ単に英語らしきものを話せるだけでは、ビジネスシーンにおいては通用しない時代が来ているのかもしれません。

近い将来、スマホの同時通訳アプリが進化するから、英会話学習なんて必要ないという人もいます。海外旅行ぐらいなら、そうしたアプリで充分ですが、ビジネスで英語を使う人は、やはり、直接会話することが重要ではないでしょうか。なぜなら、言葉が「通じる」以上に、相手を「理解する」ことが重要であり、そのためには人と人が対面して会話することこそが肝心だと思うからです。

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KEI

写真付きコラムの執筆。コミュニティクリエイター。フォーチュンテラー(タロット)。日本大学藝術学部写真学科卒業。

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