ひろがる「ふるさと納税」

2023.03.20暮らし

2008年からスタートした「ふるさと納税」。すでに15年が経過した今、国民の間にしっかりと浸透した感があります。
元々、地方と大都市の税収格差是正のために、都市に出て行った労働者が自分の故郷に納税するというコンセプトの下にスタートしました。制度としては寄附金ですが、その寄附分の一部が納税対象額から控除されるため、広い意味で税金と呼べるかもしれません。「ふるさと納税」は、寄付に対して返礼品がもらえるという部分に注目が集まりがちですが、昨今では、寄付金の使い道を考えて寄付先を選択する人も増えているようです。
余談ですが、コンセプトの浸透課程において「ふるさと納税」という”的を射た”ネーミングが果たした役割は、とても大きかったと思います。

個性豊かな返礼品

スタート当初、地方自治体はこぞって魅力ある返礼品を打ち出しました。中にはパソコンやオンラインゲームの権利など物議を醸すものもありましたが、2019年度以降は改正・厳格化され「返礼品の返礼率30%・域内のもののみ」が徹底されるようになりました。

現在も、返礼品は多種多様で、人気上位にはその地域の特色を感じられるような季節の果物や上質な肉や魚、さらには無農薬有機栽培のお米など、特別感のある食べ物がランクインしています。食べ物の人気が高いなか、近年増えてきたのが個性的な体験型の返礼品です。長崎県西海市では、無人島の宿泊体験をすることができ、焚き火やテント・ドラム缶風呂など自然豊かな土地ならではの体験が楽しめます。秋田県能代市では、伝統の「能代七夕ばやし」と呼ばれるお囃子を正流会会員10名程が演奏してくれるという変ったものもあります。

色んな返礼品を選ぶことが、寄付者にとって毎年恒例の楽しいイベントになっているという話も耳にします。そのイベントに大きな役割を果たしているのが、全国の返礼品を自由に選べるポータルサイトです。いくつか同じようなサイトが存在しますが、彼らの活動が「ふるさと納税」の推進に貢献しているのは事実です。

西海市の島々

「寄付金が何に使われるのか?」も重要

ここ数年、注目を集めているのは、寄付金の使い道です。「その地域を応援したいという気持ち」を、ちゃんと地域に届けられるような使い方をしてくれる「ふるさと納税」が数多く出てきました。
北海道上士幌町では納税されたお金を深刻な町の人口減少対策のために活用しています。主に認定保育園の料金を10年間無料にする取り組みや充分な教員の確保、民営の塾の設立、ゆくゆくは移住しこの町で子育てをしたいと思えるような環境づくり等に資金を当てています。また寄付した人と地域の住民が関われるようなイベントも定期的に開催し、継続的な交流を維持しています。

他にも、地域の活性化のためだけでなく、災害支援が必要な地域に寄付できる仕組みもあります。
被害にあわれた農家さんを支援するものから台風で折れてしまった桜の木の再生のための寄付など、その地域で大切にされてきたものを守り、支えるための寄付は全国各地にあります。こうした寄付は、現実的に被災した町の復興のための大切な財源となっているようです。各地で起きる災害を他人事と捉えず、「ふるさと納税」という仕組みを使って私たちができる範囲で支援するという流れは、困ったときは助け合うという日本人の持つ伝統的な精神になじみます。

わくわくするような返礼品からその街で暮らす人たちに思いを届けられるものまで、ふるさと納税によってできることはたくさんあります。まだ一度も使った事が無いという方は、今のあなたにあった活用方法を見つけてトライしてみてはいかがでしょうか。

上士幌町の子育て
台風による水害援助

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KEI

写真付きコラムの執筆。コミュニティクリエイター。フォーチュンテラー(タロット)。日本大学藝術学部写真学科卒業。

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