2022.12.10暮らし
スマートフォンひとつでどこでも音楽を聞くことができる時代に、手間をかけてレコード盤で音楽を聞いたり、最新の音楽ではなく、あえて80年代の音楽を聞くことなどが若い世代を中心に注目を集めています。
70年代までは、音楽を聞くソースとして定番だったものの、CDの登場により急速に売り上げが落ち、もはや骨董品扱いをされていたレコード盤ですが、ここ10年でその生産額は10倍以上に増えており、ブームとまでは行かなくとも、一定数のファンを獲得し失地回復を図っています。その中心的な役割を果たしているのは、Z世代と呼ばれる若者達です。彼らから支持されている理由は、デジタル音源では味わえない独特の音質もさることながら、部屋に飾ってインテリアとして楽しんだり、アート的にコレクションしたり、いわば、”もの”としての魅力にも注目しているからだと言われています。彼らがレコード盤を求めるきっかけとなったのは、サブスクやYoutubeで70年代、80年代の楽曲を聞き、手元に残る形で作品が欲しいという需要が高まったからだと言われています。特に日本製の中古アルバムは品質やパッケージの状態が良いものが多く、国内外で人気があるそうです。
レコード盤を聴くにはレコードプレイヤーが必要ですが、最新の機器はBluetooth機能が付いているものも発売されています。せっかくのアナログ音源を最終的にデジタル化して聴くのは残念なのですが、今やアナログ機器は生産量の少なさのためか高価な物が多く、Z世代にはややハードルが高いのかもしれません。
70年代から80年代の日本の音楽を今は「レトロ音楽」などと称しますが、当時はCITY POPやNew Musicと呼ばれていました。60年代のビートルズの登場以降、英米の音楽が一気に広がり、10代以下の日本の子供達の間でも日常的にそれらの音楽を耳にする機会が増えました。彼らが大人になって創り始めたのがCITY POPです。CITY POPを一言で表すのは難しいのですが、英米音楽の技法やテイストを身につけた上で、何か日本独特の情緒的なエッセンスを感じさせるメロディラインを持つ楽曲とでも言えばいいのでしょうか。
Z世代に人気のレトロ音楽ですが、先に火が付いたのは欧米でした。spotifyに代表される音楽ストリーミングにおいて、松原みき、竹内まりや、山下達郎、大滝詠一などの楽曲がランキング上位に入り、日本語はもちろんのこと、欧米やアジア各国の言語でカバーされ、Youtubeに無数の動画が公開されました。これを見た日本の若者層が楽曲を気に入り、調べてみたら日本の70年代、80年代の楽曲だったというシナリオです。今も現役で活躍されているアーチストもいますが、およそ4~50年前に、すでに現在のレベルの音楽に到達していたというと点が、「レトロ」と呼ばれつつも、全く古さを感じさせない要因だと思います。同時に、音楽のプロの間でも、現代音楽においては一般的になった「リミックス」という技法が、過去の楽曲を蘇らせ、さらには発展させ、Z世代にレトロ音楽が普及することの後押しをしたという点も見逃せません。