Z世代に人気の「昭和レトロ」

2021.12.25暮らし

ギャップ流行とは?

昭和レトロが若者から人気を集め、消費の新たなトレンドになりつつある。上野にある純喫茶「ギャラン」「古城」「丘」をご存じだろうか?週末ともなると、一日中満席になるのだが、どのテーブルを見ても若者なのだ。私が訪れた時も、若者ばかりだった。私の横の若い女性がスマホで撮影していたのはクリームソーダだ。懐かしく思う私の横で、「かわいい」とつぶやく女性。おそらくインスタにアップするのだろうと推察される。いわゆる「映(バ)える」というヤツだ。昭和を知らない若者の目には、我々が懐かしいものも新鮮で新しいものに映っているようだ。
ビジネスの世界では30年~40年ごとに流行は周期的にやってくると言われている。それは、とりもなおさず世代間ギャップによる流行だ。今の昭和レトロ人気もご多分に漏れずギャップ流行だが、私が嬉しく思うのは、古き良きと旧世代が思うカルチャーを若い世代が引き継いでくれることだ。
このギャップ流行の図式は、とてもおもしろい。ビジネス世界の猛者は、この周期を利用して流行を仕掛けてくるのだが、最近の傾向を見ると、猛者も流行するとは思わないところから流行が発生し、あわてて猛者たちが流行に乗るということが起こっている。昭和レトロも同じような傾向があり、若者が見つけ、追随したビジネスマンがより大きく展開しているのだ。インテリアや雑貨なども、それらしい雰囲気のものや復刻版が生産され人気を博しているという。

Z世代が発見し、X世代が追随

2021年5月にリニューアルオープンした西武ゆうえんちは昭和の街並みを再現してみせた。街の中では、予告なしに突如始まるショーやパフォーマンスで臨場感を演出している。どこか暖かい人間味を感じる演出は、デジタル時代で人と人のかかわりが希薄なっている若者でも、深層心理ではアナログな関りを求めていることを見抜いていたかのように、オープン以来、好調な集客だという。西武ゆうえんち以外にも地域興しに昭和レトロを取り入れている場所は、全国に多々見られるようになった。
こうした、仕掛けられた昭和も人気なのだが、若者が火をつけてくれたおかげで、50代を中心としたいわゆるX世代も子供の頃の街のイメージを求めて全国各地の昭和レトロを訪ねるようになってきた。関東では、埼玉の川越、千葉県の佐原や東京の青梅などが人気だ。親子で訪れても楽しめるという魅力があるからだ。あと数年は、おそらく全国各地でこの傾向は続くと思う。
街もモノも、便利で近代的になるのは悪くはないが、全てが新しくなることが決して心地よいとは思わない。Z世代の彼らがX世代の我々に教えてくれたことの意味は大きい。冒頭の喫茶店で、クリームソーダを楽しむ女性を横目に、私は「バナジュー」と注文してみた。

− writer

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甲斐 ツマオ

エッセイスト。漫画原作者。映像作家。

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