本のある場所と私たちの暮らし

2022.10.11暮らし

本は皆さんの暮らしの中でどんな立ち位置でしょうか?
コロナ禍において、お家で過ごす時間が増えたことで、手軽さやスピード感重視の生活を見直し、じっくりと時間をかけて丁寧に物事と向き合う傾向が高まったという声を聞きます。そんな背景があってか、デジタル化が進む時代の中で、ネット書店で電子書籍を購入すれば簡単・便利であるにもかかわらず、敢えてアナログの代表とも言える「本」というものに触れられる場所やスタイルも、時代の流れに合わせて大きく進化(深化?)しています。今回は本のある場所の今と、その魅力をご紹介します。

街と人と本と

「武蔵野プレイス」はJ R中央線・西武多摩川線武蔵境駅にある大型図書館です。
地下3階から4階まであり、本を借りるためだけではない人の生活に寄り添うような様々な工夫がたっぷり詰まっている場所です。ワーキングスペースから音楽・美術など幅広く対応したスタジオ、子どもたちのためのフロアや学びの合間にほっと一息つくようなカフェ・・
ここでは本を通して生まれる人々の交流やインターネットで簡単に情報が得られる時代だからこそ「自発的に学ぶ」ということの大切さを教えてくれます。また貝殻の中に包まれているような室内空間は何度でも訪れたくなるような居心地で、私的には満点を付けたくなるような空間になっています。

「小鳥書房」はJR中央線国立駅の商店街の一角に小さな書店を構える出版社です。
“たったひとりのための本を届ける出版社と書店” を掲げており、本を“売ること”と“作ること”どちらも大切にされています。店内にあるのは選ばれたわずかな本だけですが、一人一人の「こんな本が欲しい」に寄り添う取り寄せサービスもあり、また本を買うことだけではなく本を作ってみたいという気持ちを叶えるインターン体験も行っています。
インターンの期間は、最低1日から始まり、最大1週間まで継続できます。もっと長い期間を希望する場合は、地域のゲストハウスに滞在しながら学ぶ長期滞在コースがオススメです。挑戦することも、得意分野を生かすことも、それぞれの関心に合わせて選べるようになっています。

武蔵野プレイス
小鳥書房

本にとことん向き合う空間

「fuzkue/フヅクエ」は初台・下北沢・荻窪に3店舗をかまえる本を読むためのカフェです。
飲み物やごはんなどを注文するごとに安くなっていく座席料のシステムや、店内での会話や作業は禁止されているなど、本をとことん読みたいひとのための空間になっています。
飲食のメニューは軽食から体にやさしい定食、珈琲はもちろんカクテルなどのお酒まで幅広くあり、読む本や時間帯など気分に合わせて心ゆくまで過ごすことができます。

今日ご紹介した書店は、ほんの一例ですが、今、全国で公共・民間を問わず、私たちにゆっくり向き合うことの大切さ、そこから得られる学びの広がりを教えてくれるような、本を“借りる”、“買う”だけではない、本を通して豊かな時間を得られるような場所が増えていることを嬉しく思います。

fuzkue/フヅクエ

− writer

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かんのようこ

フリーライター。イラストレーター。絵本や「食」にまつわるエッセイなど執筆。

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