2024.02.29キレイ
女性にとって「鉄」は大切な栄養素です。最近では、女性をターゲットにした食品や栄養訴求商品に「鉄」というワードが多く見られるようになってきました。
「鉄」は元素記号で言うところの「Fe」ですから、釘や鉄棒、建築現場の鋼材など、重厚な金属で「モノ」を作る原材料です。でも、「鉄分」と表現すると、一転、テーマは栄養素の話になります。どちらも同じ”鉄”なので少し混乱してしまいますよね。今回は、わかっていそうで、わかりにくい「鉄分」を取り上げてみたいと思います。
厚生労働省によると、鉄分は、私たちのからだに必要な微量ミネラルの一種で、体内には約3~5gの鉄分があると定義されています。そのうちの70%は赤血球のヘモグロビンや、筋肉のミオグロビンに多く存在します。残りの30%は貯蔵鉄分として、肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられます。長さ65ミリ、直径3ミリの釘1本が約4gですので、そのくらいの「鉄分」が体内に存在しているわけです。もちろん、鉄の固まりがそのままあるわけではありません。「ヘム鉄」と呼ばれる生合成物に変化して、からだの各部に吸収されます。
鉄分が不足すると、酸素を運ぶ役割を持つヘモグロビンが減って赤血球が少なくなり、全身に十分に酸素が供給されなくなるため、いわゆる「貧血」になることがあります。また、筋肉に存在するミオグロビンも少なくなるため、筋力が低下したり、疲労を感じやすくなったりします。特に女性は、月経や妊娠・授乳によって多くの鉄を必要とするため、鉄が不足しやすいと言われています。また、アスリートは鉄分が不足しがちだというデータもあるようです※。理由は、足裏の衝撃により赤血球が壊れてしまうからです。赤血球の寿命は通常120日程度ですが、壊れてしまう赤血球の数が新しく作られる数を上回ってしまうと、血液中の赤血球が少なくなり、貧血となってしまいます。マラソンなど陸上の長距離競技、サッカー、バスケットボール、剣道など、足裏に衝撃の強いスポーツをしている方は特に鉄分が不足しがちだといわれています。
※日本体育学会資料による
食物の中に存在する「鉄分」は、大きく分けて2種類あります。「ヘム鉄」とそれ以外(非ヘム鉄)です。その違いを端的に言うと、吸収率の違いと言えます。「ヘム鉄」は、吸収率が10〜20%程度、他方、「非ヘム鉄」は2〜5%と言われています。※
「ヘム鉄」を多く含む食品は、レバーや魚介類などの動物性のものが多いのですが、「非ヘム鉄」は、野菜や穀類、豆類、海藻など植物性食品に多く含まれます。体内に吸収されにくい「非ヘム鉄」も、吸収を促進する食品と一緒に摂ることで吸収率を上げることができます。その代表的な食品が緑黄色野菜やイチゴなどの果物、梅肉などです。これらの中には、ビタミンCとクエン酸が多く含まれるため、その働きが「非ヘム鉄」の吸収率を高めます。また、タンパク質が「非ヘム鉄」の吸収率を高めるというデータもあります。※
レシピサイトやレシピ本を見ると、鉄分補給に特化したレシピが数多く掲載されていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか?いずれにしても「鉄分」は、私たちの体内を流れる血液と密接に関係したミネラルですので、微量とは言え、毎日、少しづつ摂取することが重要ですね。
※1日本人の食事摂取基準(2020年版)(厚生労働省)より